製造業システムの要件定義で確認する項目
製造業システムの要件定義では、画面と機能だけでなく、製品・工程・設備・材料・ロット・図面といったデータの持ち方、現場での入力方法、例外処理、締め処理、既存基幹との関係、データ移行、そして業務を止められる時間まで確認します。ここが曖昧なまま開発に入ると、稼働直前に手戻りが集中します。
このページで分かること
- 要件定義で作る成果物と、その使い道
- 業務・データ・設備・連携・非機能の確認項目
- 移行・テスト・教育・切替で決めておくこと
- 見積依頼書に含めると各社の比較が揃う項目
要件定義の成果物
- 対象業務の範囲と対象外の明示(どこまでを今回作るか)
- 現行業務フローと、将来の業務フロー
- データ項目表(マスタ、トランザクション、履歴)
- 画面・帳票の一覧と、それぞれの利用者・利用場面
- 外部連携仕様(相手システム、方式、タイミング、失敗時の扱い)
- 非機能要件(性能、可用性、権限、ログ、保守時間帯)
- データ移行方針と検証方法
- テスト・教育・切替の計画
- 見積の前提条件と、除外事項
これらは特定の開発会社に依存しない形で作れます。他社への見積依頼にもそのまま使えるため、要件定義だけを先に切り出して発注する進め方は合理的です。
対象業務と例外の確認
- 対象業務の始まりと終わり(どの伝票・指示から始まり、何をもって完了か)
- 登場人物と役割(入力する人、承認する人、結果を見る人)
- 例外パターン(特急、分納、仕様変更、手配替え、返品、再検査)
- 例外の発生頻度と、現在どう処理しているか
- 締め処理(日次・月次で何を確定させるか、遡って訂正できるか)
- 現在Excelで行っている計算・判定のロジック
例外の扱いが要件定義の中心です。標準フローだけを定義したシステムは、稼働後に「例外のときだけExcel」という運用を生み、データが分断されます。
マスタ・トランザクション・履歴
| 区分 | 確認すること |
|---|---|
| マスタ | 品番、取引先、工程、設備、材料、単価などの一意キー、採番規則、誰が保守するか、正となるシステム |
| トランザクション | 受注、指示、実績、検査、入出庫などの粒度(1件の単位)と、訂正・取消の扱い |
| 履歴 | いつ・誰が・何を変えたかを残す範囲、保存期間、参照する場面(監査、クレーム対応) |
| 追跡単位 | ロット、シリアル、製造番号のどれで追うか。混在する場合の紐づけ方 |
端末・設備・ネットワーク
- 現場で使う端末(PC、タブレット、ハンディ、既設の現場端末)と、その台数・設置場所
- 入力方法(キーボード、バーコード、QR、RFID、音声、設備からの自動取得)
- 手袋・粉塵・油・照明など、現場環境による制約
- 工場ネットワークと情報系ネットワークの分離状況、通信の可否
- 通信断が起きる場所と、その間の運用(オフライン入力の要否)
外部連携
- 連携先システムの名称・バージョン・保守ベンダー
- 連携方式(API、CSV、DB、EDI、メール取り込み)と、テスト環境の有無
- どちらのシステムを正とするか(マスタ単位で決める)
- 同期のタイミングと、遅延が許される時間
- 失敗時の扱い(再送、通知、手動取り込み、保留)
- 相手システム側の改修が必要か、その費用は誰が持つか
権限・ログ・性能・可用性
- 権限(誰がどのデータを見られるか、原価・単価の閲覧制限)
- 承認フロー(誰が、どの条件で承認するか、代理承認の可否)
- 操作ログ・変更履歴の記録範囲と、改ざん防止の要求水準
- 同時利用者数と、ピーク時(月末、繁忙期)の負荷
- 止められない時間帯と、保守作業を行える時間帯
- バックアップと復旧目標(どこまで戻せれば業務が続くか)
データ移行・テスト・教育・切替
- 移行対象と年数を決める(全件移行が必要とは限らない)
- 表記ゆれ・重複の整理基準と、判断する人を決める
- 移行後の検証方法(件数、合計、抜き取り)を移行前に合意する
- テストは本番相当のデータで、現場の担当者自身が入力して確認する
- 教育の対象者、方法、所要時間を決める(交代制なら全直をカバーする)
- 切替方式(一斉切替か並行稼働か)と、戻す条件をあらかじめ決める
見積依頼書に含めると比較が揃う項目
- 対象業務と対象外の明示
- 利用者数、拠点数、端末の種類
- 連携先システムと方式、相手側の協力可否
- 移行データの範囲と現状の品質
- 非機能要件(権限、ログ、性能、保守時間帯)
- 希望時期と、決裁のスケジュール
- 見積の内訳区分(要件定義/開発/移行/テスト/教育/保守)の指定
よくある質問
- 要件定義にはどのくらい期間がかかりますか。
- 対象業務の数と、社内で意思決定できる体制があるかで変わります。1業務に限定し、関係者が決まっていれば数週間規模、複数業務にまたがる場合はそれ以上を見込みます。期間を短くする最大の要因は、発注者側で「決める人」が決まっていることです。
- 現場が忙しく、ヒアリングの時間が取れません。
- 全員に長時間のヒアリングを行う必要はありません。実際に使っているExcelや帳票を見せてもらい、そこに現れる項目と例外から質問を絞る方法をとります。そのうえで、確認が必要な点だけを短時間で聞く形にします。
- 要件定義の成果物は他社への見積依頼に使えますか。
- 使えます。特定の技術構成に依存しない形(業務、データ項目、連携、非機能、移行)で作るため、複数社へ同じ条件で見積を依頼でき、比較の前提が揃います。
製造業向けのご相談
要件整理の進め方を相談する
対象業務と、今使っているExcelまたは帳票を1点共有いただければ、要件定義で確認すべき項目、先に決めるべき論点、社内で用意しておくと早い情報を整理してお返しします。
要件整理の進め方を相談する初回の相談で契約を迫ることはありません。対象外と判断した場合はその理由をお伝えします。
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