AIが書いたコードをそのまま本番に入れていいのか? 中小企業の現場で起きているリスクを整理する

AI開発・生成AI活用公開日:2026年6月7日
高畑 拓海
高畑 拓海

株式会社シンシア 開発支援事業部 部長

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  1. 要点
  2. 著者見解
  3. 何が起きているのか:AI活用の「プレゼン成功」と「コード混入」の非対称性
  4. 「動くコード」と「運用できるコード」は別物である
  5. 中小企業ほど「不具合後の対応コスト」が致命的になる理由
  6. 問題の本質はリテラシーではなく「判断の仕組み」の欠如
  7. 現場がすぐできる現実的な対策:いきなり完璧を目指さない
  8. 開発会社・外部パートナーに求められる姿勢の変化

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アスキーの記事「このままで大丈夫? 中小企業の現場を変えつつあるAIの危うさ」は、AI生成コードを躊躇なく本番に組み込む中小企業の実態とリスクを指摘している。開発PM・エンジニアとして複数案件を担当してきた私の立場から、「エンジニア目線では不安しかない」という問題提起をさらに現場に引き寄せて整理したい。


要点

  • 中小企業の現場でAI活用が加速しており、AIで作成したプレゼンが増え説得力が増した事例が報告されている
  • 一方でChatGPTが生成したコードを「ほいほい組み込む」事例も増加しており、不具合発生時に誰がサポートするのかという問題が指摘されている
  • プレゼン作成と異なりコードは「動く・動かない」だけでは品質を判断できず、セキュリティホールや保守コストは表面に出ない
  • 記事筆者は「中小企業のAIリテラシはまだまだ」「野放しにしていると大きなしっぺ返しを食らう」と警鐘を鳴らしている
  • 問題は個人のリテラシー不足だけでなく、AI生成物を検証・承認するプロセスが組織に存在しないことにある

著者見解

何が起きているのか:AI活用の「プレゼン成功」と「コード混入」の非対称性

記事では、AIで作成したプレゼンが増え説得力が増した事例が紹介されている。プレゼン作成は成果物が可視化しやすく、非専門家でも品質を判断できる。一方、AI生成コードはアウトプットが「動く・動かない」では判断できない。セキュリティホール・依存関係の問題・保守コストは表面に出ない。この非対称性を理解せずに「AIでプレゼンも資料もコードも同じように作れる」と扱うことが、リスクの根本にあると私は考えている。

「動くコード」と「運用できるコード」は別物である

AI生成コードは一見動作する。しかし、エラーハンドリング・ログ設計・スケーラビリティ・テストカバレッジは生成時に考慮されないことが多い。現場PM・開発者として複数案件に携わってきた経験から言うと、不具合が顕在化するのは「リリース直後」ではなく「運用が始まってから数週間〜数ヶ月後」が多い。

記事が「不具合が起こった際に、果たして誰がサポートしてくれるのか」と問うている点は正確で、AI生成コードには保守の文脈が存在しない。責任の空白が生まれる。実務でいうと、コードの保守性・可読性・変更容易性まで含めて「運用できる状態」と呼ぶべきで、AI生成物はここを担保しない。この違いを社内で言語化できていないことが、最初のリスクだと思っている。

中小企業ほど「不具合後の対応コスト」が致命的になる理由

大企業であれば、不具合対応にIT部門やベンダーを動員できる。中小企業は人的リソースも予算も限られており、障害対応が事業停止に直結するリスクがある。AI生成コードの構造を把握しているエンジニアが社内にいない場合、外部ベンダーに調査・修正を依頼しても「誰も書いていないコード」は解析コストが高くなる。記事が指摘する「あとで大きなしっぺ返し」は、技術的負債という言葉では収まらない事業リスクになりうる。

問題の本質はリテラシーではなく「判断の仕組み」の欠如

記事は「中小企業のAIリテラシはまだまだ」と表現しているが、個人の知識不足として捉えると対策が「研修で終わる」落とし穴にはまる。現場目線では、問題の本質は「AI生成物をどのフローで検証し、誰がGoサインを出すか」というプロセスが組織に存在しないことにある。リテラシーを高めても、判断の仕組みがなければ同じリスクが繰り返される。組織として運用できるルールが必要だ、というのが私の考えだ。

現場がすぐできる現実的な対策:いきなり完璧を目指さない

まずAI生成コードの「利用可能な範囲」を明文化することが出発点になる。例えば、スクリプト・自動化ツールはOK、本番システムへの直接組み込みは要エンジニアレビュー、といった区分を1枚のドキュメントにするだけで判断基準が生まれる。社内にエンジニアがいない場合は、外部パートナーとの「軽量レビュー契約」を検討する価値がある。月次でもレビュー窓口があるだけでリスクは大きく下がる。また、不具合発生時の連絡先と対応フローを事前に決めておくことが最低限の保険になる。いきなり「AI禁止」や「全件審査」ではなく、まず判断基準を1枚のドキュメントにするところから始めることが現実的だと思っている。

開発会社・外部パートナーに求められる姿勢の変化

中小企業がAIを自力で使い始めている今、外部の開発パートナーには「作って終わり」ではなく「顧客が自力でやったことのリスクを拾う」役割が求められるようになっている。PM・エンジニアとして顧客折衝を担ってきた経験から、「なぜそのコードを入れたのか」を責めるより、現状を把握して次の選択肢を提示することが信頼につながる。AI普及が進む中で、開発支援の価値は「コードを書く速度」ではなく「判断の質と運用の安心感」に移行しつつある。この変化に向き合えるかどうかが、開発会社側にも問われていると感じている。


出典: このままで大丈夫? 中小企業の現場を変えつつあるAIの危うさ(アスキー) - Yahoo!ニュース

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