AIエージェントが壊す「人間スケール前提」の監視基盤——オブザーバビリティの再設計が急務だ

AI開発・生成AI活用公開日:2026年7月13日
徐 聖博
徐 聖博

株式会社シンシア 代表取締役社長

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AIエージェントが壊す「人間スケール前提」の監視基盤——オブザーバビリティの再設計が急務だ

AIエージェントは夜間も休まず動き続ける。それだけで、多くの企業の監視インフラが根本から機能しなくなるリスクがある。

出典: AI agents are breaking enterprise observability stacks built for human-scale query patterns

要点 (事実のみ)

  • Imply社のChief Architect・Eric Tschetter氏がEM360TechのアナリストKevin Petrie氏との対談で、AIエージェントが従来のオブザーバビリティツールの限界を露呈させていると指摘した
  • 既存の監視ツールは「夜間にトラフィックが減少し、業務時間帯にクエリが集中する」という人間起点の前提で設計・チューニングされている
  • AIエージェントは24時間一定量のクエリを発行し続けるため、監視スタックが「正常な低負荷」状態を学習できず、異常検知のベースライン確立が困難になる
  • 結果として、誤検知によるアラート過多か、性能劣化の見落としのどちらかが起きる
  • 同問題は「コンピューティング容量の不足」ではなく「監視ロジックのミスマッチ」に起因するとTschetter氏は説明している
  • 2026年のエンタープライズ技術界では、AIへの投資と本番稼働の成果との乖離が繰り返しテーマになっており、オブザーバビリティの不備がその一因とされている

徐 聖博の見解

私がこの記事で重要だと感じるのは、問題の本質が「インフラの処理能力」ではなく「監視ロジックの設計前提」にある、という指摘だ。

私たちが受託開発やAIエージェント導入支援を行っている現場でも、同様のパターンを目にする。PoC段階では限定的なトラフィックで動作するため、既存の監視設定がそのまま通用しているように見える。ところが本番スケールへ移行した途端、アラートが嵐のように飛ぶか、逆に異常をまったく検知しないかという二択に直面する。

根本的な原因は、「通常状態」の定義がずれていることにある。人間が操作するシステムでは夜間の静穏期があり、そこがベースラインとして機能する。AIエージェントにはその静穏期がなく、監視系が学習の基準を持てないまま運用されることになる。

私が実装・運用の観点で特に注意すべきだと考えるのは、エージェント導入の際に「監視の再設計」をプロジェクトスコープに明示的に含めることだ。多くの場合、監視設定はインフラの付属物として後回しにされる。しかしエージェントの場合、監視ロジックそのものが「エージェントが正常に動いているかどうか」を判断する唯一の窓口になる。ここを設計しないまま本番投入するのは、計器なしで飛行機を飛ばすようなものだ。

また、発注側・意思決定者の立場から見ると、「AIエージェントの導入コスト」に監視インフラの再設計費用が含まれていないケースが多い。ベンダー選定の際に「エージェント向けクエリパターンへの対応状況」を明示的に確認することが、プロジェクト後半での手戻りを防ぐ実用的な一手になる。

(編集レンズ: 実装・運用視点 / 発注側・中小企業への含意)

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株式会社Atsumell様|サービスを止めずにデータ基盤を刷新したBPマッチングプラットフォームの開発事例

**約11ヶ月・のべ4名のリレーで、機能開発を止めることなく基盤の刷新を完了しました。** 参画時期の重なりは最大2〜3名で、メンバーは1ヶ月の短期集中から5ヶ月の継続稼働までさまざまです。それでも積み上げが効いたのは、**先に入ったメンバーが構造を残していたから**でした。2025年7月に導入された Repository 層の上で、半年後に別のメンバーが移行作業を進めています。認可条件はコード上の仕様コメントとして、スナップショット方式はアーキテクチャドキュメントとして残り、いずれも「引き継いだ人が読んで分かる」形になっています。 この期間に手掛けた業務機能は、協力会社のラベル分類機能、パートナー企業管理画面、CSV による一括招待とデータ出力、案件辞退フロー、ステータス変更通知メールなど多岐にわたります。基盤刷新と機能開発は、どちらかを止めて行ったものではありません。 > 大規模な基盤刷新は「一度止めて作り直す」以外にも方法があります。呼び出し側を壊さない層を挟み、テーブル単位で少しずつ移し、移行と改善を混ぜない。この3つを守れば、リリースを止めずに土台は入れ替えられます。事業を止められないプロダクトほど、この進め方の価値が出ます。 ### この事例からの示唆 **稼働中のサービスでも基盤は入れ替えられる。** 前提は、呼び出し側の契約(戻り値の形)を保つ中間層を挟むこと、移行単位をテーブルや画面まで小さく割ること、そして移行と機能改善を同じコミットに混ぜないことの3点です。この3つが崩れると、不具合が出たときに原因が移行なのか改善なのか切り分けられなくなり、結果として一度止めるしかなくなります。 **メンバーが入れ替わる前提の体制では、成果物より「残る構造」が価値になる。** 短期参画のエンジニアを増やしても積み上がらないプロジェクトは、設計判断が個人の記憶に閉じていることが原因であるケースが多いです。この事例では、認可条件をコード上の仕様コメントとして、データ設計をアーキテクチャドキュメントとして残す運用を徹底しました。開発体制の失敗パターンについては[システム開発の失敗から立て直す方法](https://blog.xincere.jp/articles/system-development-failure-patterns)でも整理しています。 **要件が固まりきらない領域ほど、データ設計で制約を表現する。** 「協力会社が人材情報を編集したら応募内容が変わってしまう」といった問題は、運用ルールやUIの注意書きでは再発します。スキーマとトリガーで表現すれば、アプリ側の実装漏れがあっても壊れません。要件を仕様に落とす工程そのものについては[要件定義の進め方](https://blog.xincere.jp/articles/requirements-definition-process)を参照してください。 ### よくある質問 **Q. 稼働中のサービスを止めずに基盤刷新はできますか。** A. できます。この事例では約11ヶ月にわたり、機能リリースを継続しながらデータアクセス基盤の移行と主キー変更まで実施しました。ただし「一斉に切り替える」やり方では現実的に困難で、呼び出し側を壊さない中間層を用意して段階移行する設計が前提になります。 **Q. 途中でメンバーが入れ替わる体制でも品質は保てますか。** A. 設計判断がドキュメントとコードに残っていれば保てます。この事例では参画時期の重なりが最大2〜3名、1ヶ月だけの参画者もいる体制で、前任の導入した層の上に後任が半年後の移行作業を積み上げています。 **Q. どのくらいの規模・期間の支援ですか。** A. 約11ヶ月、のべ4名(同時稼働は最大2〜3名)です。プロジェクトの規模や費用感の考え方は[システム開発とは](https://blog.xincere.jp/articles/what-is-system-development)で解説しています。 ### 関連する支援領域 - [システム刷新の進め方|検討・計画から移行までの方法](https://blog.xincere.jp/articles/core-system-renewal-guide) — 稼働中システムを止めずに刷新する判断基準 - [業務システム開発の要件定義とは?進め方・手順を7ステップで解説](https://blog.xincere.jp/articles/business-system-development-requirements-definition-steps) — 要件を仕様に落とす工程 - [システム開発の失敗から立て直す方法](https://blog.xincere.jp/articles/system-development-failure-patterns) — 体制・引き継ぎで詰まったときの選択肢 同じように「稼働を止められないプロダクトの基盤を作り替えたい」という課題をお持ちでしたら、[開発のご相談](https://blog.xincere.jp/contacts)からお問い合わせください。現状のコードとデータ構造を確認したうえで、段階移行の設計からご一緒します。

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徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いはnoteの創業ストーリーに綴っている。

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