DandoriAIと基幹システムの連携方法|大企業導入で選ぶ2つのアーキテクチャ

業務システム・基幹システム開発公開日:2026年4月16日最終更新日:2026年6月14日
徐 聖博
徐 聖博

株式会社シンシア 代表取締役社長

Share
目次開く
  1. はじめに
  2. なぜ基幹システムとの連携が必要なのか
  3. 2つの連携アーキテクチャ
  4. アーキテクチャ1:API直接連携
  5. アーキテクチャ2:CSVバッチ同期(セキュリティ重視)
  6. セキュリティ設計:ISMSを見据えた構成
  7. AWSインフラのセキュリティ標準
  8. API連携時の認証・認可
  9. CSV連携時のセキュリティ
  10. API連携とCSVバッチ、どちらを選ぶか
  11. なぜシンシアがこの領域を得意とするのか
  12. まとめ
  13. 関連記事

シンシアへのご相談

自社のAI活用・開発体制について相談する

AIをどこまで内製するか、どの業務から着手するか、体制をどう組むか。開発会社・SIer・事業会社の開発部門の方からのご相談を無料で承っています。同じ問題を自社でも解いている立場としてお話しします。

AI活用の進め方を相談する

まだ検討段階の方は 質問だけでもOK(電話番号は任意)

はじめに

DandoriAIは、シンシアが開発したAI見積もりエージェントです。商談メモや議事録、メールから自動で見積もりを生成し、サプライヤーとのやり取りを一元管理できる仕組みを提供しています。

中小企業での活用はもちろんですが、最近は大企業・上場企業からの引き合いも増えてきました。そこで必ず話題になるのが「既存の基幹システムとどうつなぐか」という問いです。この記事では、私たちが実際に採用している2つの連携アーキテクチャと、それぞれのセキュリティ設計の考え方を整理します。

なぜ基幹システムとの連携が必要なのか

DandoriAIは、見積もり→発注→請求というフローを自動化します。しかし、大企業の現場では見積もりデータがSAP・OBIC・勘定奉行などの基幹システム(ERP)に集約されており、DandoriAIが単独で動くだけでは業務は完結しません。

具体的には以下のようなデータを基幹システムと同期する必要があります。

  • 仕入先マスタ・単価マスタ
  • 発注実績・受注実績
  • 在庫情報
  • 会計仕訳データ

これらを手動でコピペしていては、AIで自動化した意味が薄れます。基幹システムとの連携設計が、DandoriAI導入の成否を左右すると私は考えています。

2つの連携アーキテクチャ

シンシアでは、顧客のセキュリティ要件・IT環境・運用体制に応じて、主に2つのアーキテクチャを使い分けています。

アーキテクチャ1:API直接連携

基幹システムがAPIを公開している、またはAPIを追加開発できる場合に採用します。DandoriAIと基幹システムをリアルタイムで繋ぎ、マスタデータや実績データを即時同期します。

【API直接連携の構成】

┌────────────────────────────────────────────┐
│                  AWS VPC                   │
│                                            │
│  ┌──────────────┐    API    ┌───────────┐  │
│  │  DandoriAI   │◄────────►│  API GW   │  │
│  │  (ECS)       │  HTTPS   │ (Lambda)  │  │
│  └──────────────┘          └─────┬─────┘  │
│                                  │        │
│                         PrivateLink/      │
│                         VPC Peering       │
│                                  │        │
└──────────────────────────────────┼────────┘
                                   │
               ┌───────────────────▼──────────────┐
               │        顧客の基幹システム           │
               │  (SAP / OBIC / 勘定奉行 / 独自ERP) │
               └────────────────────────────────────┘

メリット: データがリアルタイムで同期される。見積もり作成時に最新の単価・在庫情報を参照できる。

適用条件: 基幹システム側にAPIが存在する(またはシンシアが開発できる)こと。ネットワークレベルでの接続が許可されていること。

シンシアの役割: 基幹システム側のAPIを設計・実装し、DandoriAI側のコネクタも開発します。認証はOAuth 2.0またはAPIキー+IP制限の組み合わせが標準です。

アーキテクチャ2:CSVバッチ同期(セキュリティ重視)

「外部サービスとの常時接続は認められない」「基幹システムをネットワークに開放できない」という大企業・金融・製造業では、このアーキテクチャが現実解です。

【CSVバッチ同期の構成】

┌───────────────────────────────────────────────────┐
│                     AWS VPC                        │
│                                                    │
│  ┌──────────────┐        ┌──────────────────────┐  │
│  │  DandoriAI   │        │  S3(暗号化バケット)  │  │
│  │  (ECS)       │◄──────►│  KMS暗号化 / WORM     │  │
│  └──────────────┘ Import │  バケットポリシー     │  │
│                   Export └──────────┬────────────┘  │
│                                     │               │
│  ┌──────────────────────────────┐   │ S3イベント    │
│  │  Lambda バッチ処理           │◄──┘               │
│  │  (CSV検証・変換・取込)      │                   │
│  └──────────────────────────────┘                   │
└───────────────────────────────────────────────────┘
                          ▲
           CSV転送(SFTP / AWS Transfer Family)
                          │
         ┌────────────────┴──────────────────────┐
         │          顧客の社内ネットワーク          │
         │  基幹システム → 定期CSVエクスポートバッチ │
         │  (夜間バッチ / 1時間ごと など)         │
         └───────────────────────────────────────┘

メリット: 基幹システムをネットワークに開放しない。CSV転送のみなのでセキュリティ審査を通りやすい。既存の夜間バッチに相乗りできる。

適用条件: 多少のデータ鮮度の遅延(数時間〜翌日)が許容できること。

シンシアの役割: AWS Transfer Family(SFTP)またはAWS DataSyncを使ったCSV取込パイプラインを構築します。CSVのフォーマット変換・バリデーション・エラーハンドリングをLambdaで実装し、CloudWatch Alarmsで異常を監視します。

セキュリティ設計:ISMSを見据えた構成

どちらのアーキテクチャを採用するにしても、大企業との契約ではセキュリティ要件が必ず論点になります

シンシアは現在、ISMS(ISO/IEC 27001)の認証取得に向けて準備を進めています。認証取得を前提に、以下のセキュリティ対策をDandoriAIのインフラ標準として実装しています。

AWSインフラのセキュリティ標準

対策項目実装内容
通信暗号化すべての通信をTLS 1.2以上で保護
データ暗号化S3・RDS・EBSをAWS KMSで暗号化
ネットワーク分離VPC・プライベートサブネット・セキュリティグループで最小権限アクセス
アクセス管理IAMロールによる最小権限原則、MFA必須
監査ログAWS CloudTrail・VPCフローログを有効化、S3に長期保管
脆弱性管理Amazon Inspectorによる定期スキャン
バックアップRDS自動バックアップ、S3クロスリージョンレプリケーション

API連携時の認証・認可

API直接連携の場合は、以下を標準とします。

  • OAuth 2.0 Client Credentials(サービス間認証)
  • IPホワイトリスト(AWS Elastic IPで固定)
  • リクエスト署名(AWS Signature V4またはHMAC)
  • レート制限(API Gateway + WAFで実装)

CSV連携時のセキュリティ

CSVバッチ同期の場合は、以下を標準とします。

  • SFTP認証:公開鍵認証のみ(パスワード認証は無効)
  • 転送後の検証:ハッシュ値(SHA-256)で改ざん検知
  • 保管期間制御:S3ライフサイクルポリシーで自動削除
  • アクセスログ:S3サーバーアクセスログ+CloudTrailで全操作を記録

API連携とCSVバッチ、どちらを選ぶか

私がお客様に説明するときの判断軸をまとめます。

観点API直接連携CSVバッチ同期
データ鮮度リアルタイム数時間〜翌日
基幹システムへの影響APIが必要変更不要(CSV出力のみ)
セキュリティ審査ネットワーク開放が必要通りやすい
開発工数中〜大
向いている業種SaaS・EC・小売製造・金融・官公庁系

「基幹システムを変えずに、まず動かしてみたい」という場合はCSVバッチから始めて、運用が安定したらAPI連携に移行するロードマップも提案しています。

なぜシンシアがこの領域を得意とするのか

シンシアは設立以来、受託開発・SIの実績を積んできました。基幹システム(ERP)の開発・改修・連携は私たちの主力事業のひとつです。

DandoriAIはその延長線上にあります。AI見積もりエージェントという「フロント」と、ERPを中心とした「バックエンド」を両方理解しているからこそ、連携設計の勘所がわかります。

APIを作る場合も、CSVバッチを作る場合も、「本当に業務で動き続けるか」を設計段階から問い続けるのが私たちのスタンスです。デモが動くことと、本番稼働で運用負荷が小さいことは別の話だからです。

まとめ

  • DandoriAIの大企業導入では、基幹システムとの連携設計が最重要課題のひとつ
  • シンシアはAPI直接連携とCSVバッチ同期の2つを状況に応じて使い分ける
  • どちらもAWSベースのセキュリティ標準(暗号化・ログ・アクセス制御)を実装
  • ISMS(ISO/IEC 27001)認証取得に向けた準備を進めており、大企業のセキュリティ要件に対応
  • 「まずCSVから始めてAPI連携に移行する」段階的ロードマップも提案可能

DandoriAIの導入や基幹システム連携の設計について、ご相談があればお気軽にお問い合わせください。


出典: DandoriAI - AIを活用した見積もり自動化エージェント


Dandori AIや基幹システム連携・AI導入を検討している方へ

シンシアは、基幹システムへのAI組み込み・データ連携アーキテクチャの設計から本番導入までを準委任型で支援します。

基幹連携・AI導入を相談する

関連記事

Share

シンシアへのご相談

自社のAI活用・開発体制について相談する

AIをどこまで内製するか、どの業務から着手するか、体制をどう組むか。開発会社・SIer・事業会社の開発部門の方からのご相談を無料で承っています。同じ問題を自社でも解いている立場としてお話しします。

AI活用の進め方を相談する

まだ検討段階の方は 質問だけでもOK(電話番号は任意)

徐 聖博のプロフィール写真

この記事の書き手に直接相談する

徐 聖博株式会社シンシア 代表取締役社長

記事の内容について、より具体的に自社のケースで聞きたいことがあれば、徐 聖博を指名してご相談いただけます。営業担当ではなく、 実際に手を動かしている本人が回答します。

シンシアの開発事例

株式会社Cloverse様|アパレル向けAIクリエイティブ基盤「Clovia Enterprise」を4名体制で開発支援

**2026年2月の開発着手から約5.5ヶ月で、アパレル企業向けAIクリエイティブ基盤としてプレスリリース公開まで到達しました(2026年7月29日発表)。** Cloverse様の発表によれば、Clovia Enterprise は PUMA社・ルック社をはじめとする**30社以上のアパレルブランドとの検証**を経ており、現在は先行導入企業(Founding Partner)を限定募集する段階に入っています。 開発規模は次のとおりです(2026年7月29日時点、リポジトリ実測値)。 | 指標 | 実績 | |---|---| | 開発体制 | エンジニア4名 | | 開発期間 | 2026年2月13日〜(継続中) | | コミット数 | 約1,480 | | プルリクエスト | 373本 | | 対応イシュー | 428件 | | 実装計画ドキュメント | 162本 | | データモデル | 83テーブル | ### この事例からの示唆 **生成AIプロダクトの難所は、モデルではなく業務側にある。** 画像を1枚生成すること自体は、いまや誰でもできます。事業として成立させるために必要だったのは、マスター管理・制作進行・レビュー・権限・課金・非同期処理といった、業務を回すための地味な設計でした。83テーブルという規模は、その事実を素直に表しています。 **未知の業界のプロダクトは、業務を理解した側が設計しないと形にならない。** アパレルEC制作の工程を知らないまま「AIで画像生成する機能」を作っても、現場では使われません。ヒアリング・R&D・プロトタイプ・提案までを開発チームが担ったのは、そうしないと仕様が決まらない領域だったからです。この構造は[「使われないシステム」が生まれる要件定義の失敗](https://blog.xincere.jp/articles/why-unused-systems-are-born-requirements-definition)とちょうど裏返しの関係にあります。 **モデル選定に正解が無い領域では、検証を設計プロセスに組み込む。** どの生成モデルを使うかは半年で変わります。だからこそ、モデルを差し替えられる構造と、検証結果を機能設計に反映し続ける進め方の両方が必要でした。 ### よくある質問 **Q. 生成AIを使ったプロダクトの開発は、通常のシステム開発と何が違いますか。** A. 最も違うのは、着手時点で仕様が確定できない点です。どのモデルがどの品質を出せるかは検証しないと分からないため、R&Dとプロトタイプを設計工程に組み込む必要があります。一方で、組織・権限・課金・非同期処理といった土台は通常のSaaS開発と同じ設計が求められます。 **Q. 業界知識がない領域でも開発支援を依頼できますか。** A. できます。この事例ではアパレルEC制作の業務理解から入り、ヒアリングとプロトタイプを通じて要件そのものを一緒に作りました。仕様が固まっていない段階からのご相談のほうが、むしろ手戻りが少なくなります。 **Q. どのくらいの体制・期間の支援ですか。** A. エンジニア4名、2026年2月から継続中です。プレスリリース公開までは約5.5ヶ月でした。規模や費用感の考え方は[システム開発とは](https://blog.xincere.jp/articles/what-is-system-development)で解説しています。 ### 関連する支援領域 - [AIシステム開発とは?開発の流れ・費用相場・失敗しない進め方](https://blog.xincere.jp/articles/ai-system-development-guide) — 生成AIプロダクト開発の全体像 - [AI PoCの進め方5ステップ|「PoC止まり」を防ぎ本番導入につなげる実践手順](https://blog.xincere.jp/articles/ai-poc-how-to-proceed) — 検証を本番に接続する設計 - [FDE(Forward Deployed Engineer)が示す、上流から伴走できるエンジニアの価値](https://blog.xincere.jp/articles/fde-forward-deployed-engineer-upstream-value) — 本事例の進め方の背景 生成AIを使った新規プロダクトの立ち上げや、仕様が固まりきっていない段階からの開発支援については、[開発のご相談](https://blog.xincere.jp/contacts)からお問い合わせください。 **出典:** [アパレル企業向けAIクリエイティブ基盤「Clovia Enterprise」提供開始(株式会社Cloverse / PR TIMES, 2026-07-29)](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000139250.html)

株式会社Cloverseの事例を読む →

この記事が役に立ったら、Google で優先表示を

Google 検索の「優先するソース」に blog.xincere.jp を追加すると、シンシアの新着記事がトップニュースなどで見つけやすくなります。

Google で優先ソースに追加

著者について

徐 聖博のプロフィール写真
徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いはnoteの創業ストーリーに綴っている。

人気記事

    お問い合わせ

    システム開発やAI推進についてのご相談はこちらから

    無料相談を予約する