はじめに
DandoriAIは、シンシアが開発したAI見積もりエージェントです。商談メモや議事録、メールから自動で見積もりを生成し、サプライヤーとのやり取りを一元管理できる仕組みを提供しています。
中小企業での活用はもちろんですが、最近は大企業・上場企業からの引き合いも増えてきました。そこで必ず話題になるのが「既存の基幹システムとどうつなぐか」という問いです。この記事では、私たちが実際に採用している2つの連携アーキテクチャと、それぞれのセキュリティ設計の考え方を整理します。
なぜ基幹システムとの連携が必要なのか
DandoriAIは、見積もり→発注→請求というフローを自動化します。しかし、大企業の現場では見積もりデータがSAP・OBIC・勘定奉行などの基幹システム(ERP)に集約されており、DandoriAIが単独で動くだけでは業務は完結しません。
具体的には以下のようなデータを基幹システムと同期する必要があります。
- 仕入先マスタ・単価マスタ
- 発注実績・受注実績
- 在庫情報
- 会計仕訳データ
これらを手動でコピペしていては、AIで自動化した意味が薄れます。基幹システムとの連携設計が、DandoriAI導入の成否を左右すると私は考えています。
2つの連携アーキテクチャ
シンシアでは、顧客のセキュリティ要件・IT環境・運用体制に応じて、主に2つのアーキテクチャを使い分けています。
アーキテクチャ1:API直接連携
基幹システムがAPIを公開している、またはAPIを追加開発できる場合に採用します。DandoriAIと基幹システムをリアルタイムで繋ぎ、マスタデータや実績データを即時同期します。
【API直接連携の構成】
┌────────────────────────────────────────────┐
│ AWS VPC │
│ │
│ ┌──────────────┐ API ┌───────────┐ │
│ │ DandoriAI │◄────────►│ API GW │ │
│ │ (ECS) │ HTTPS │ (Lambda) │ │
│ └──────────────┘ └─────┬─────┘ │
│ │ │
│ PrivateLink/ │
│ VPC Peering │
│ │ │
└──────────────────────────────────┼────────┘
│
┌───────────────────▼──────────────┐
│ 顧客の基幹システム │
│ (SAP / OBIC / 勘定奉行 / 独自ERP) │
└────────────────────────────────────┘
メリット: データがリアルタイムで同期される。見積もり作成時に最新の単価・在庫情報を参照できる。
適用条件: 基幹システム側にAPIが存在する(またはシンシアが開発できる)こと。ネットワークレベルでの接続が許可されていること。
シンシアの役割: 基幹システム側のAPIを設計・実装し、DandoriAI側のコネクタも開発します。認証はOAuth 2.0またはAPIキー+IP制限の組み合わせが標準です。
アーキテクチャ2:CSVバッチ同期(セキュリティ重視)
「外部サービスとの常時接続は認められない」「基幹システムをネットワークに開放できない」という大企業・金融・製造業では、このアーキテクチャが現実解です。
【CSVバッチ同期の構成】
┌───────────────────────────────────────────────────┐
│ AWS VPC │
│ │
│ ┌──────────────┐ ┌──────────────────────┐ │
│ │ DandoriAI │ │ S3(暗号化バケット) │ │
│ │ (ECS) │◄──────►│ KMS暗号化 / WORM │ │
│ └──────────────┘ Import │ バケットポリシー │ │
│ Export └──────────┬────────────┘ │
│ │ │
│ ┌──────────────────────────────┐ │ S3イベント │
│ │ Lambda バッチ処理 │◄──┘ │
│ │ (CSV検証・変換・取込) │ │
│ └──────────────────────────────┘ │
└───────────────────────────────────────────────────┘
▲
CSV転送(SFTP / AWS Transfer Family)
│
┌────────────────┴──────────────────────┐
│ 顧客の社内ネットワーク │
│ 基幹システム → 定期CSVエクスポートバッチ │
│ (夜間バッチ / 1時間ごと など) │
└───────────────────────────────────────┘
メリット: 基幹システムをネットワークに開放しない。CSV転送のみなのでセキュリティ審査を通りやすい。既存の夜間バッチに相乗りできる。
適用条件: 多少のデータ鮮度の遅延(数時間〜翌日)が許容できること。
シンシアの役割: AWS Transfer Family(SFTP)またはAWS DataSyncを使ったCSV取込パイプラインを構築します。CSVのフォーマット変換・バリデーション・エラーハンドリングをLambdaで実装し、CloudWatch Alarmsで異常を監視します。
セキュリティ設計:ISMSを見据えた構成
どちらのアーキテクチャを採用するにしても、大企業との契約ではセキュリティ要件が必ず論点になります。
シンシアは現在、ISMS(ISO/IEC 27001)の認証取得に向けて準備を進めています。認証取得を前提に、以下のセキュリティ対策をDandoriAIのインフラ標準として実装しています。
AWSインフラのセキュリティ標準
| 対策項目 | 実装内容 |
|---|---|
| 通信暗号化 | すべての通信をTLS 1.2以上で保護 |
| データ暗号化 | S3・RDS・EBSをAWS KMSで暗号化 |
| ネットワーク分離 | VPC・プライベートサブネット・セキュリティグループで最小権限アクセス |
| アクセス管理 | IAMロールによる最小権限原則、MFA必須 |
| 監査ログ | AWS CloudTrail・VPCフローログを有効化、S3に長期保管 |
| 脆弱性管理 | Amazon Inspectorによる定期スキャン |
| バックアップ | RDS自動バックアップ、S3クロスリージョンレプリケーション |
API連携時の認証・認可
API直接連携の場合は、以下を標準とします。
- OAuth 2.0 Client Credentials(サービス間認証)
- IPホワイトリスト(AWS Elastic IPで固定)
- リクエスト署名(AWS Signature V4またはHMAC)
- レート制限(API Gateway + WAFで実装)
CSV連携時のセキュリティ
CSVバッチ同期の場合は、以下を標準とします。
- SFTP認証:公開鍵認証のみ(パスワード認証は無効)
- 転送後の検証:ハッシュ値(SHA-256)で改ざん検知
- 保管期間制御:S3ライフサイクルポリシーで自動削除
- アクセスログ:S3サーバーアクセスログ+CloudTrailで全操作を記録
API連携とCSVバッチ、どちらを選ぶか
私がお客様に説明するときの判断軸をまとめます。
| 観点 | API直接連携 | CSVバッチ同期 |
|---|---|---|
| データ鮮度 | リアルタイム | 数時間〜翌日 |
| 基幹システムへの影響 | APIが必要 | 変更不要(CSV出力のみ) |
| セキュリティ審査 | ネットワーク開放が必要 | 通りやすい |
| 開発工数 | 中〜大 | 中 |
| 向いている業種 | SaaS・EC・小売 | 製造・金融・官公庁系 |
「基幹システムを変えずに、まず動かしてみたい」という場合はCSVバッチから始めて、運用が安定したらAPI連携に移行するロードマップも提案しています。
なぜシンシアがこの領域を得意とするのか
シンシアは設立以来、受託開発・SIの実績を積んできました。基幹システム(ERP)の開発・改修・連携は私たちの主力事業のひとつです。
DandoriAIはその延長線上にあります。AI見積もりエージェントという「フロント」と、ERPを中心とした「バックエンド」を両方理解しているからこそ、連携設計の勘所がわかります。
APIを作る場合も、CSVバッチを作る場合も、「本当に業務で動き続けるか」を設計段階から問い続けるのが私たちのスタンスです。デモが動くことと、本番稼働で運用負荷が小さいことは別の話だからです。
まとめ
- DandoriAIの大企業導入では、基幹システムとの連携設計が最重要課題のひとつ
- シンシアはAPI直接連携とCSVバッチ同期の2つを状況に応じて使い分ける
- どちらもAWSベースのセキュリティ標準(暗号化・ログ・アクセス制御)を実装
- ISMS(ISO/IEC 27001)認証取得に向けた準備を進めており、大企業のセキュリティ要件に対応
- 「まずCSVから始めてAPI連携に移行する」段階的ロードマップも提案可能
DandoriAIの導入や基幹システム連携の設計について、ご相談があればお気軽にお問い合わせください。
出典: DandoriAI - AIを活用した見積もり自動化エージェント
Dandori AIや基幹システム連携・AI導入を検討している方へ
シンシアは、基幹システムへのAI組み込み・データ連携アーキテクチャの設計から本番導入までを準委任型で支援します。