まじめに働きたい気持ちがエンジニアを追い詰める——職場の感情環境がチームの判断力を左右する理由
「ゴキゲンでいること」が技術的な話題になる時代に、私はなんとなく既視感を覚えつつも、改めて現場の解像度で読み直したいと感じた。
出典: まじめに働きたい気持ちがエンジニアを追い詰める 職場の不機嫌が脳をバグらせる理由
要点 (事実のみ)
- 翔泳社刊『エンジニアのための自己管理入門 堅牢でスケーラブルな働き方を構築する技術』(著:小田中育生、定価2,948円、2026年6月24日発売)の第2回抜粋記事
- 「レジリエンス」を「鋼のメンタル」や「決して落ち込まない強さ」ではなく、「へこんだ状態から自分の力でもとの状態に戻ってこられる力」と定義している
- ポジティブ心理学の「拡張形成理論(Broaden-and-Build Theory)」(Fredrickson, 2001)に基づき、ポジティブな感情状態のとき思考・行動の選択肢が広がると述べている
- リリース直前のクリティカルなバグ発見という事例を用いて、ネガティブな雰囲気のチームでは犯人探しと硬直した発想に陥りやすく、ポジティブなチームでは課題解決に意識が向かうと説明している
- 「うまくいかない方法を明らかにすること自体が成果である」という発想が、探索的な仕事を進めるうえで重要と述べている
高畑 拓海の見解
記事の主張に共感できる点が多い。「レジリエンス=何があっても動じない鋼のメンタル」という誤解は現場でも根強く、「折れないこと」を強さと見なす文化が、むしろメンバーを追い詰める場面を私も目にしてきた。「へこんでもいい、戻ってくる力がレジリエンス」という再定義は、チームに伝えやすく実用的だと感じる。
現場目線で特に刺さったのは、バグ発見時のチームの反応の差を描いた箇所だ。リリース直前に問題が出たとき、犯人探しが始まるかどうかは、その瞬間のチームの感情状態だけでなく、日頃からの心理的安全性の積み重ねに依存している。「拡張形成理論」の話は、「ゴキゲンでいましょう」という精神論ではなく、チームが良い意思決定をするための環境設計の問題として読むべきだと思う。
一方で、運用の観点から補足したいことがある。「ゴキゲンな状態を保つ」ことを個人の努力に帰着させると、うまくいかなかったときに「あなたがネガティブだったから」という責任転嫁になりかねない。ポジティブな感情状態が判断力の柔軟性をもたらすとしても、そのための環境をチームとして設計することが先決だ。たとえば、インシデント発生時のポストモーテムを「犯人探しではなく学びの場」として明文化しておくこと、失敗の言語化を歓迎する1on1の設計、ふりかえりの場の定期化といった仕組みが、個人の努力を支える土台になる。感情の話は、仕組みで補完してはじめて現場に乗る。
(編集レンズ: 現場・運用目線、チーム再現性目線)