ダイキンのグローバル人材DB「DAIKIN People」が示す、人材データ統合の本質的難しさ

業務システム・基幹システム開発公開日:2026年7月7日
徐 聖博
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株式会社シンシア 代表取締役社長

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ダイキンのグローバル人材DB「DAIKIN People」が示す、人材データ統合の本質的難しさ

グローバル10万人規模の人材データを1つのシステムに束ねるプロジェクトが動いた。技術選定より先に解くべき問題が何だったかが、この事例からよく見える。

出典: フォーティエンスとSAPジャパン、ダイキンのグローバル人材データベース「DAIKIN People」の構築・運用を支援

要点 (事実のみ)

  • ダイキン工業が「SAP SuccessFactors」をベースとした人材データベース「DAIKIN People」を、世界約50の国と地域・180拠点以上で本格稼働
  • 対象は国内約1万1000人に加え、中国・アジア・欧州・北米中南米の海外グループ会社の部長級以上約1000人
  • フォーティエンスコンサルティング(NTTデータグループ)が構想検討・PoC・本構築・国内外展開まで一貫して支援
  • 管理情報は異動・昇格などの発令情報、スキル・資格、キャリア希望、育成方向性など。閲覧は役割別の権限制御で運用
  • マスタ統合・コード標準化・重複排除・更新ワークフローなどのデータガバナンス整備を同時に実施

徐 聖博の見解

この事例で私が注目するのは、「SAP SuccessFactors を選んだ」という技術判断よりも、「PoC で要件を整理してから本構築に入った」というプロセス設計の方だ。

人材データの統合は、会計や在庫のシステム統合とは性格が異なる。数値データと違い、「キャリアの希望」や「育成の方向性」のような定性情報はフォーマット以前に「何を記録するか」の設問設計が肝になる。ここを曖昧にしたまま本構築に入ると、データが埋まっても活用できないシステムになる。フォーティエンスが構想段階から入り、PoCで要件を絞り込んでから設計に落とし込んだという流れは、私がお客さまに提案するアプローチと一致していて、正しい順序だと感じる。

もう一点、データガバナンス(マスタ統合・コード標準化・重複排除)を「機能」ではなく「運用設計」として同時に整備している点も見逃せない。グローバル展開でよく起きる失敗は、本社側が設計したデータ構造に現地の法規制や慣習が合わず、各拠点のデータ品質がバラバラになるケースだ。本記事では「各地域の法規制を踏まえた綿密なコミュニケーション」と書かれており、その合意形成コストを正面から織り込んでいる点は評価できる。

私たちが支援する中堅・中小企業の現場では、同規模のグローバル展開を一気に行うケースは少ない。ただ、「人材データが各拠点・各形式に散在し一元的な把握が難しい」という課題は、規模を問わず日本の企業が抱える構造的な問題だ。この事例が示す「定性情報の設問設計 → PoC → データガバナンス設計 → 本構築」という順序は、規模にかかわらず参照できる設計思想だと考えている。

(編集レンズ: 実装・運用視点 / 発注側・中小企業への含意)

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著者について

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徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いは[noteの創業ストーリー](https://note.com/shengboxu/n/n8b4e482c62ad)に綴っている。

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