PinterestがQwen改造でAIコスト90%削減・精度30%向上|中小企業は内製化を「そのまま」真似できるか

AI開発・生成AI活用公開日:2026年5月30日最終更新日:2026年7月20日
徐 聖博
徐 聖博

株式会社シンシア 代表取締役社長

Share
目次開く
  1. ニュースの要点
  2. 私の見解
  3. 中小企業・開発実務への示唆
  4. まとめ

シンシアへのご相談

AI導入について相談する

自社業務にAIを使えるか確かめたい方へ。PoC設計・RAG構築・AIエージェント導入の相談を無料で承っています。

自社業務にAIを使えるか相談する

まだ検討段階の方は 質問だけでもOK(電話番号は任意)

PinterestがオープンソースのLLM「Qwen 3-VL」の視覚エンコーダ層を独自の埋め込みに置き換え、AI関連コストを90%削減しながら精度を30%向上させました。私はこのニュースを「オープンモデルの内製カスタマイズが競争力の源泉になりうる」実例として評価しつつ、中小企業がそのまま真似できる話ではないという前提も合わせて持つべきだと考えています。出典は AI Times の記事、および一次情報として VentureBeat です。

ニュースの要点

  • 月間アクティブユーザー6.2億人を抱えるPinterestが、Qwen 3-VLの視覚エンコーダ層を取り除き独自のマルチモーダル埋め込みで再構築。
  • 結果として AIコストを90%削減・精度を30%向上。画像メタデータをオフラインで事前計算する方式により推論レイテンシは20分の1に改善。
  • CTOのMatt Madrigal氏は「独自データで微調整すれば、データ品質がモデルサイズを上回る」とコメント。Apache 2.0ライセンスのモデルを重みレベルで自社用途に最適化。
  • ユーザーの嗜好を動的に捉える「テイストグラフ(嗜好グラフ)」を構築し、発見から購買意図への転換を促進。会話型ショッピングアシスタント「Navigator 1」もQwen 3-VLベースで構築。
  • ただし学習・運用には相応の技術力とインフラが必要で、すべての企業が取れる道ではない、という前提が読み取れます。

出典: PinterestがQwen改造でAIコスト90%削減(AI Times)

私の見解

90%削減・精度30%向上という数字はインパクト大ですが、私が大事だと思うのは数字そのものより「自社データで最適化すると、汎用モデルでは出せない精度とコスト効率が同時に手に入る」という構造です。CTOの『データ品質がモデルサイズを上回る』という言葉は、まさにここを突いています。AIが単なるコストではなく、自社の独自データを武器に変える手段になりうる、という示唆は中小企業にも通じます。

ただし、ここは正直に言うべきだと思っています。Pinterestのような巨大トラフィックと、専任のML人材・インフラがあるからこそ成立する話で、中小企業が同じく「自前で視覚層を置き換えて再学習」しようとすると、削減できるコストより人件費・インフラ投資のほうが高くつくのが普通です。

では中小企業は何を学ぶべきか。私は「内製化そのもの」ではなく「自社データを生かす発想」だと思います。フルスクラッチの再学習ではなく、既存のオープンモデルやAPIに自社データを組み合わせる(RAGや軽量チューニング)といった、規模に見合った中間解を取るのが現実的です。

中小企業・開発実務への示唆

発注側が見積もりや提案を受けるときは、「フルで内製化しましょう」という大掛かりな提案を鵜呑みにせず、自社の規模・データ量・運用体制に見合っているかを冷静に判断すべきです。コスト構造の考え方は AI開発費用の相場を徹底解説 が参考になります。

まずは小さく、自社データとの相性を確かめてから判断するのが安全です。進め方は AI PoCの進め方完全ガイド、外注で取り組むなら技術力を見極める AI開発会社の選び方と比較ポイント を確認してください。

まとめ

  • 学ぶべきは「内製化」ではなく「自社データを競争力に変える発想」。データ品質がモデルサイズを上回る。
  • フル再学習は大規模事業者向け。中小企業は規模に見合った中間解(RAG・軽量チューニング)が現実的。
  • 大掛かりな内製化提案は、自社の体制に見合うかを冷静に判断する。

参考:

Share

シンシアへのご相談

AI導入について相談する

自社業務にAIを使えるか確かめたい方へ。PoC設計・RAG構築・AIエージェント導入の相談を無料で承っています。

自社業務にAIを使えるか相談する

まだ検討段階の方は 質問だけでもOK(電話番号は任意)

徐 聖博のプロフィール写真

この記事の書き手に直接相談する

徐 聖博株式会社シンシア 代表取締役社長

記事の内容について、より具体的に自社のケースで聞きたいことがあれば、徐 聖博を指名してご相談いただけます。営業担当ではなく、 実際に手を動かしている本人が回答します。

シンシアの開発事例

株式会社Atsumell様|サービスを止めずにデータ基盤を刷新したBPマッチングプラットフォームの開発事例

**約11ヶ月・のべ4名のリレーで、機能開発を止めることなく基盤の刷新を完了しました。** 参画時期の重なりは最大2〜3名で、メンバーは1ヶ月の短期集中から5ヶ月の継続稼働までさまざまです。それでも積み上げが効いたのは、**先に入ったメンバーが構造を残していたから**でした。2025年7月に導入された Repository 層の上で、半年後に別のメンバーが移行作業を進めています。認可条件はコード上の仕様コメントとして、スナップショット方式はアーキテクチャドキュメントとして残り、いずれも「引き継いだ人が読んで分かる」形になっています。 この期間に手掛けた業務機能は、協力会社のラベル分類機能、パートナー企業管理画面、CSV による一括招待とデータ出力、案件辞退フロー、ステータス変更通知メールなど多岐にわたります。基盤刷新と機能開発は、どちらかを止めて行ったものではありません。 > 大規模な基盤刷新は「一度止めて作り直す」以外にも方法があります。呼び出し側を壊さない層を挟み、テーブル単位で少しずつ移し、移行と改善を混ぜない。この3つを守れば、リリースを止めずに土台は入れ替えられます。事業を止められないプロダクトほど、この進め方の価値が出ます。 ### この事例からの示唆 **稼働中のサービスでも基盤は入れ替えられる。** 前提は、呼び出し側の契約(戻り値の形)を保つ中間層を挟むこと、移行単位をテーブルや画面まで小さく割ること、そして移行と機能改善を同じコミットに混ぜないことの3点です。この3つが崩れると、不具合が出たときに原因が移行なのか改善なのか切り分けられなくなり、結果として一度止めるしかなくなります。 **メンバーが入れ替わる前提の体制では、成果物より「残る構造」が価値になる。** 短期参画のエンジニアを増やしても積み上がらないプロジェクトは、設計判断が個人の記憶に閉じていることが原因であるケースが多いです。この事例では、認可条件をコード上の仕様コメントとして、データ設計をアーキテクチャドキュメントとして残す運用を徹底しました。開発体制の失敗パターンについては[システム開発の失敗から立て直す方法](https://blog.xincere.jp/articles/system-development-failure-patterns)でも整理しています。 **要件が固まりきらない領域ほど、データ設計で制約を表現する。** 「協力会社が人材情報を編集したら応募内容が変わってしまう」といった問題は、運用ルールやUIの注意書きでは再発します。スキーマとトリガーで表現すれば、アプリ側の実装漏れがあっても壊れません。要件を仕様に落とす工程そのものについては[要件定義の進め方](https://blog.xincere.jp/articles/requirements-definition-process)を参照してください。 ### よくある質問 **Q. 稼働中のサービスを止めずに基盤刷新はできますか。** A. できます。この事例では約11ヶ月にわたり、機能リリースを継続しながらデータアクセス基盤の移行と主キー変更まで実施しました。ただし「一斉に切り替える」やり方では現実的に困難で、呼び出し側を壊さない中間層を用意して段階移行する設計が前提になります。 **Q. 途中でメンバーが入れ替わる体制でも品質は保てますか。** A. 設計判断がドキュメントとコードに残っていれば保てます。この事例では参画時期の重なりが最大2〜3名、1ヶ月だけの参画者もいる体制で、前任の導入した層の上に後任が半年後の移行作業を積み上げています。 **Q. どのくらいの規模・期間の支援ですか。** A. 約11ヶ月、のべ4名(同時稼働は最大2〜3名)です。プロジェクトの規模や費用感の考え方は[システム開発とは](https://blog.xincere.jp/articles/what-is-system-development)で解説しています。 ### 関連する支援領域 - [システム刷新の進め方|検討・計画から移行までの方法](https://blog.xincere.jp/articles/core-system-renewal-guide) — 稼働中システムを止めずに刷新する判断基準 - [業務システム開発の要件定義とは?進め方・手順を7ステップで解説](https://blog.xincere.jp/articles/business-system-development-requirements-definition-steps) — 要件を仕様に落とす工程 - [システム開発の失敗から立て直す方法](https://blog.xincere.jp/articles/system-development-failure-patterns) — 体制・引き継ぎで詰まったときの選択肢 同じように「稼働を止められないプロダクトの基盤を作り替えたい」という課題をお持ちでしたら、[開発のご相談](https://blog.xincere.jp/contacts)からお問い合わせください。現状のコードとデータ構造を確認したうえで、段階移行の設計からご一緒します。

株式会社Atsumellの事例を読む →

この記事が役に立ったら、Google で優先表示を

Google 検索の「優先するソース」に blog.xincere.jp を追加すると、シンシアの新着記事がトップニュースなどで見つけやすくなります。

Google で優先ソースに追加

著者について

徐 聖博のプロフィール写真
徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いはnoteの創業ストーリーに綴っている。

人気記事

    お問い合わせ

    システム開発やAI推進についてのご相談はこちらから

    無料相談を予約する