AI転換の最大の壁は「技術」ではなく「人と組織」——浪潮信息CEOの提言が刺さる理由

AI開発・生成AI活用公開日:2026年6月21日
徐 聖博
徐 聖博

株式会社シンシア 代表取締役社長

Share

シンシアへのご相談

自社のAI活用・開発体制について相談する

AIをどこまで内製するか、どの業務から着手するか、体制をどう組むか。開発会社・SIer・事業会社の開発部門の方からのご相談を無料で承っています。同じ問題を自社でも解いている立場としてお話しします。

AI活用の進め方を相談する

まだ検討段階の方は 質問だけでもOK(電話番号は任意)

AI転換の最大の壁は「技術」ではなく「人と組織」——浪潮信息CEOの提言が刺さる理由

中国のサーバー・AI基盤大手である浪潮信息の董事長が、技術カンファレンスの場で「AI転換で一番詰まるのは組織・文化・プロセスだ」と断言した。インフラ屋のトップがそう言うのだから、聞く価値がある。

出典: AI転型最大的门槛,不是技术,是人 – 量子位

要点 (事実のみ)

  • 浪潮信息董事長の彭震が、清華大学全球産業研究院主催の人工智能+生態大会 (AIEC2026) にて「AI転換最大の障壁は人である」と発言
  • McKinseyの調査では、88%の企業が少なくとも1つのシーンでAIを常態化使用しているが、規模化落地まで進んでいる企業は約3分の1にとどまる(1年前は78%)
  • 浪潮信息は自社のIT部門を「智能化転型部」に改組し、AIトランスフォーメーションの主導権を技術部門からビジネス部門へ移管。全社員向けに13講座の理論研修と能力認定を実施
  • Human+Agentを組み合わせた組織単位を「Humagent」と命名し、各Agentに独立したデジタルIDと職務・権限を付与する運用モデルを提唱
  • 社内事例として、エンジニア1名とAgentの協働でオープンソースプロジェクト「ClawManager」を約1週間で開発、22万行のコードを産出し純人手比170倍の効率を達成。GitHub星評価はリリース後3か月で1.7Kを超え、ダウンロード数は3.6万回に達した
  • IDC分析によれば、SaaSの市場シェアは現在約5%まで急縮小していると指摘

徐 聖博の見解

「AI転換の壁は技術ではなく人だ」というメッセージは、私自身がシンシアの受託開発やAIエージェント支援の現場で繰り返し目にしてきた光景と重なる。ツールを入れることと、それを組織の中で機能させることの間には、埋めにくいギャップがある。

彭震が提示した「+AI」と「AI+」の区別は整理として有用だと思う。AIをツールとして使う段階と、Agentを組織の構成員として設計・運用・評価する段階とでは、求められる意思決定のレイヤーがまったく違う。前者はプロジェクトで完結するが、後者は人事・権限設計・ガバナンスまで触れることになる。

「Humagent」という造語については、概念の新規性よりも、「Agentに独立したIDと責任範囲を与え、人と同じ枠組みで評価・監査する」という運用設計を明示した点に実質的な意味があると私は読む。ハルシネーション率や採用率を人事評価に近い指標として扱うというアプローチは、GenAIの運用管理が属人的な「様子見」から組織的なガバナンスへ移行しつつある流れを体現している。

一方でリスクとして気になるのは、Agentを「デジタル社員」として扱うモデルの責任の所在だ。Agentが誤った意思決定をトリガーしたとき、監督者である人間側の責任範囲がどう定義されているかは、特にエンタープライズ向けには慎重な設計が必要になる。浪潮信息が「人+Agent+権責体系+データガバナンス」という4要素を明示しているのはその意識の表れだろうが、実務での詰め方はまだ試行錯誤の段階だと思われる。

発注側の企業にとっての含意はシンプルだ。AIツール導入のPoC予算を確保するだけでは足りなくて、「誰がAgentの運用と評価に責任を持つか」という組織設計をセットで考えないと、デモは動いたが現場に定着しなかったという結末になる。この議論に今のうちから向き合っておくことが、先行者のメリットをきちんと刈り取る条件になると私は見ている。

(編集レンズ: 発注側/中小企業/開発実務への含意 + 実装・運用視点)

Share

シンシアへのご相談

自社のAI活用・開発体制について相談する

AIをどこまで内製するか、どの業務から着手するか、体制をどう組むか。開発会社・SIer・事業会社の開発部門の方からのご相談を無料で承っています。同じ問題を自社でも解いている立場としてお話しします。

AI活用の進め方を相談する

まだ検討段階の方は 質問だけでもOK(電話番号は任意)

徐 聖博のプロフィール写真

この記事の書き手に直接相談する

徐 聖博株式会社シンシア 代表取締役社長

記事の内容について、より具体的に自社のケースで聞きたいことがあれば、徐 聖博を指名してご相談いただけます。営業担当ではなく、 実際に手を動かしている本人が回答します。

シンシアの開発事例

株式会社Atsumell様|サービスを止めずにデータ基盤を刷新したBPマッチングプラットフォームの開発事例

**約11ヶ月・のべ4名のリレーで、機能開発を止めることなく基盤の刷新を完了しました。** 参画時期の重なりは最大2〜3名で、メンバーは1ヶ月の短期集中から5ヶ月の継続稼働までさまざまです。それでも積み上げが効いたのは、**先に入ったメンバーが構造を残していたから**でした。2025年7月に導入された Repository 層の上で、半年後に別のメンバーが移行作業を進めています。認可条件はコード上の仕様コメントとして、スナップショット方式はアーキテクチャドキュメントとして残り、いずれも「引き継いだ人が読んで分かる」形になっています。 この期間に手掛けた業務機能は、協力会社のラベル分類機能、パートナー企業管理画面、CSV による一括招待とデータ出力、案件辞退フロー、ステータス変更通知メールなど多岐にわたります。基盤刷新と機能開発は、どちらかを止めて行ったものではありません。 > 大規模な基盤刷新は「一度止めて作り直す」以外にも方法があります。呼び出し側を壊さない層を挟み、テーブル単位で少しずつ移し、移行と改善を混ぜない。この3つを守れば、リリースを止めずに土台は入れ替えられます。事業を止められないプロダクトほど、この進め方の価値が出ます。 ### この事例からの示唆 **稼働中のサービスでも基盤は入れ替えられる。** 前提は、呼び出し側の契約(戻り値の形)を保つ中間層を挟むこと、移行単位をテーブルや画面まで小さく割ること、そして移行と機能改善を同じコミットに混ぜないことの3点です。この3つが崩れると、不具合が出たときに原因が移行なのか改善なのか切り分けられなくなり、結果として一度止めるしかなくなります。 **メンバーが入れ替わる前提の体制では、成果物より「残る構造」が価値になる。** 短期参画のエンジニアを増やしても積み上がらないプロジェクトは、設計判断が個人の記憶に閉じていることが原因であるケースが多いです。この事例では、認可条件をコード上の仕様コメントとして、データ設計をアーキテクチャドキュメントとして残す運用を徹底しました。開発体制の失敗パターンについては[システム開発の失敗から立て直す方法](https://blog.xincere.jp/articles/system-development-failure-patterns)でも整理しています。 **要件が固まりきらない領域ほど、データ設計で制約を表現する。** 「協力会社が人材情報を編集したら応募内容が変わってしまう」といった問題は、運用ルールやUIの注意書きでは再発します。スキーマとトリガーで表現すれば、アプリ側の実装漏れがあっても壊れません。要件を仕様に落とす工程そのものについては[要件定義の進め方](https://blog.xincere.jp/articles/requirements-definition-process)を参照してください。 ### よくある質問 **Q. 稼働中のサービスを止めずに基盤刷新はできますか。** A. できます。この事例では約11ヶ月にわたり、機能リリースを継続しながらデータアクセス基盤の移行と主キー変更まで実施しました。ただし「一斉に切り替える」やり方では現実的に困難で、呼び出し側を壊さない中間層を用意して段階移行する設計が前提になります。 **Q. 途中でメンバーが入れ替わる体制でも品質は保てますか。** A. 設計判断がドキュメントとコードに残っていれば保てます。この事例では参画時期の重なりが最大2〜3名、1ヶ月だけの参画者もいる体制で、前任の導入した層の上に後任が半年後の移行作業を積み上げています。 **Q. どのくらいの規模・期間の支援ですか。** A. 約11ヶ月、のべ4名(同時稼働は最大2〜3名)です。プロジェクトの規模や費用感の考え方は[システム開発とは](https://blog.xincere.jp/articles/what-is-system-development)で解説しています。 ### 関連する支援領域 - [システム刷新の進め方|検討・計画から移行までの方法](https://blog.xincere.jp/articles/core-system-renewal-guide) — 稼働中システムを止めずに刷新する判断基準 - [業務システム開発の要件定義とは?進め方・手順を7ステップで解説](https://blog.xincere.jp/articles/business-system-development-requirements-definition-steps) — 要件を仕様に落とす工程 - [システム開発の失敗から立て直す方法](https://blog.xincere.jp/articles/system-development-failure-patterns) — 体制・引き継ぎで詰まったときの選択肢 同じように「稼働を止められないプロダクトの基盤を作り替えたい」という課題をお持ちでしたら、[開発のご相談](https://blog.xincere.jp/contacts)からお問い合わせください。現状のコードとデータ構造を確認したうえで、段階移行の設計からご一緒します。

株式会社Atsumellの事例を読む →

この記事が役に立ったら、Google で優先表示を

Google 検索の「優先するソース」に blog.xincere.jp を追加すると、シンシアの新着記事がトップニュースなどで見つけやすくなります。

Google で優先ソースに追加

著者について

徐 聖博のプロフィール写真
徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いはnoteの創業ストーリーに綴っている。

人気記事

    お問い合わせ

    システム開発やAI推進についてのご相談はこちらから

    無料相談を予約する