AIエージェント活用の本質はデータ基盤設計にある——Snowflakeの「エージェンティック エンタープライズ」から読む

AI開発・生成AI活用公開日:2026年7月3日
徐 聖博
徐 聖博

株式会社シンシア 代表取締役社長

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Snowflakeが示す、企業のAIエージェント活用に不可欠なデータ基盤とは?

AIエージェントを業務に乗せるとき、モデルの性能より先に問われるのは「何のデータをどう管理しているか」だ。Snowflakeの発表はその問いをプラットフォーム設計として整理しており、実装を考える側として読む価値がある。

出典: Snowflakeが示す、企業のAIエージェント活用に不可欠なデータ基盤とは?

要点 (事実のみ)

  • Snowflakeの2025年2月〜2026年1月の製品売上高は44億7000万ドル(前年比29%増)、直近Q1は13億3000万ドル(前年比34%増)で成長加速
  • 「エージェンティック エンタープライズ」を構成する4コンポーネントとして「AIモデル」「エンタープライズデータ&コンテキスト」「エージェント コントロール プレーン」「ソフトウェア&アプリケーション」を同一プラットフォームで統合提供
  • AnthropicとのClaudeモデル統合、xAIのGrok追加、Bring Your Own Modelによるマルチベンダー対応を提供
  • Natoma社買収とMCPガバナンスプラットフォーム統合により100以上の業務システムへのセキュアな接続を実現
  • Snowflakeの日本サポートチームでCoCoを導入した結果、平均案件クローズ日数を14%短縮、難解な案件では50%の時間短縮を達成

徐 聖博の見解

私がこの発表で注目したのは「エージェント コントロール プレーン」と「Agent Identity」の組み合わせだ。エージェントに固有のIDを付与して「誰が何をしたか」を追跡・監査できるようにする、という設計は、業務システムへのエージェント実装で最初にぶつかる壁を正面から解決しようとしている。

受託開発やAIエージェント支援で顧客企業と向き合うと、「エージェントが何をしたかわからない」という不安が導入判断を止める最大の要因になる。モデルの精度よりも、ログの取り方・権限の境界・監査のしやすさで意思決定が進むかどうかが決まる。Snowflakeが4コンポーネントを同一プラットフォームで統合提供する戦略は、まさにそのガバナンスの問いに答える設計だと読める。

一方で、この発表はSnowflakeというデータウェアハウスに既に乗っている企業への提案として最も筋が通っている。Snowflake導入前の、データが散在していたり基幹システムから出力できていない企業にとっては、まず「何のデータをSnowflakeに入れるか」という上流の問いが先に来る。NTTデータの事例で示された「非構造化データの統合による業務インサイトの深化」は魅力的だが、その前提として社内のデータ定義が整っていることが必要で、多くの中小〜中堅企業はその手前にいる。

Snowflake CoCo の「調査主体から検証・レビュー主体へ」というサポートチームの変化は、AIエージェントが得意とする「広く速く情報を取り出す」作業と、人間が得意とする「文脈と責任を持って判断する」作業の分業として理想的な事例だ。この変化を自社で再現しようとするなら、エージェントに与えるコンテキスト(ログ、ドキュメント、過去事例)の品質設計が先決になる。

(編集レンズ: 実装・運用視点 / 発注側・中小企業への含意)

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株式会社Atsumell様|サービスを止めずにデータ基盤を刷新したBPマッチングプラットフォームの開発事例

**約11ヶ月・のべ4名のリレーで、機能開発を止めることなく基盤の刷新を完了しました。** 参画時期の重なりは最大2〜3名で、メンバーは1ヶ月の短期集中から5ヶ月の継続稼働までさまざまです。それでも積み上げが効いたのは、**先に入ったメンバーが構造を残していたから**でした。2025年7月に導入された Repository 層の上で、半年後に別のメンバーが移行作業を進めています。認可条件はコード上の仕様コメントとして、スナップショット方式はアーキテクチャドキュメントとして残り、いずれも「引き継いだ人が読んで分かる」形になっています。 この期間に手掛けた業務機能は、協力会社のラベル分類機能、パートナー企業管理画面、CSV による一括招待とデータ出力、案件辞退フロー、ステータス変更通知メールなど多岐にわたります。基盤刷新と機能開発は、どちらかを止めて行ったものではありません。 > 大規模な基盤刷新は「一度止めて作り直す」以外にも方法があります。呼び出し側を壊さない層を挟み、テーブル単位で少しずつ移し、移行と改善を混ぜない。この3つを守れば、リリースを止めずに土台は入れ替えられます。事業を止められないプロダクトほど、この進め方の価値が出ます。 ### この事例からの示唆 **稼働中のサービスでも基盤は入れ替えられる。** 前提は、呼び出し側の契約(戻り値の形)を保つ中間層を挟むこと、移行単位をテーブルや画面まで小さく割ること、そして移行と機能改善を同じコミットに混ぜないことの3点です。この3つが崩れると、不具合が出たときに原因が移行なのか改善なのか切り分けられなくなり、結果として一度止めるしかなくなります。 **メンバーが入れ替わる前提の体制では、成果物より「残る構造」が価値になる。** 短期参画のエンジニアを増やしても積み上がらないプロジェクトは、設計判断が個人の記憶に閉じていることが原因であるケースが多いです。この事例では、認可条件をコード上の仕様コメントとして、データ設計をアーキテクチャドキュメントとして残す運用を徹底しました。開発体制の失敗パターンについては[システム開発の失敗から立て直す方法](https://blog.xincere.jp/articles/system-development-failure-patterns)でも整理しています。 **要件が固まりきらない領域ほど、データ設計で制約を表現する。** 「協力会社が人材情報を編集したら応募内容が変わってしまう」といった問題は、運用ルールやUIの注意書きでは再発します。スキーマとトリガーで表現すれば、アプリ側の実装漏れがあっても壊れません。要件を仕様に落とす工程そのものについては[要件定義の進め方](https://blog.xincere.jp/articles/requirements-definition-process)を参照してください。 ### よくある質問 **Q. 稼働中のサービスを止めずに基盤刷新はできますか。** A. できます。この事例では約11ヶ月にわたり、機能リリースを継続しながらデータアクセス基盤の移行と主キー変更まで実施しました。ただし「一斉に切り替える」やり方では現実的に困難で、呼び出し側を壊さない中間層を用意して段階移行する設計が前提になります。 **Q. 途中でメンバーが入れ替わる体制でも品質は保てますか。** A. 設計判断がドキュメントとコードに残っていれば保てます。この事例では参画時期の重なりが最大2〜3名、1ヶ月だけの参画者もいる体制で、前任の導入した層の上に後任が半年後の移行作業を積み上げています。 **Q. どのくらいの規模・期間の支援ですか。** A. 約11ヶ月、のべ4名(同時稼働は最大2〜3名)です。プロジェクトの規模や費用感の考え方は[システム開発とは](https://blog.xincere.jp/articles/what-is-system-development)で解説しています。 ### 関連する支援領域 - [システム刷新の進め方|検討・計画から移行までの方法](https://blog.xincere.jp/articles/core-system-renewal-guide) — 稼働中システムを止めずに刷新する判断基準 - [業務システム開発の要件定義とは?進め方・手順を7ステップで解説](https://blog.xincere.jp/articles/business-system-development-requirements-definition-steps) — 要件を仕様に落とす工程 - [システム開発の失敗から立て直す方法](https://blog.xincere.jp/articles/system-development-failure-patterns) — 体制・引き継ぎで詰まったときの選択肢 同じように「稼働を止められないプロダクトの基盤を作り替えたい」という課題をお持ちでしたら、[開発のご相談](https://blog.xincere.jp/contacts)からお問い合わせください。現状のコードとデータ構造を確認したうえで、段階移行の設計からご一緒します。

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著者について

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徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いはnoteの創業ストーリーに綴っている。

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