AI推進担当が最初の30日でやるべきこと——ツール選定より先に「順番」を作れ

AI開発・生成AI活用公開日:2026年6月4日
徐 聖博
徐 聖博

株式会社シンシア 代表取締役社長

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  1. 要点(記事に書かれている事実)
  2. 著者見解

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note に掲載された有料記事「AI推進担当になったら最初の30日でやること」(KAWAI 氏著)を読んだ。無料公開部分だけでも、企業内AI導入が止まる構造的な理由と、30日ロードマップの骨格が整理されており、実務に使えるフレームが示されている。

要点(記事に書かれている事実)

  • AI推進が失敗する理由は「目的が曖昧」「ツールから入る」「ルールがない」「現場任せ」「成果指標がない」の5つに整理される
  • AI推進担当の仕事は「ツール導入」ではなく、経営の期待を翻訳し、現場の業務を棚卸しし、情報管理の不安を減らし、小さな成功を作り、次の導入判断へつなげること
  • 30日のロードマップは「3日で目的・責任・禁止範囲の確認」→「7日で業務棚卸し」→「14日で社内AIルール策定」→「21日で小さなPoC実施」→「30日でKPIと次月計画の報告」という順番
  • いきなり研修を行うことが特に危険と明示されている——目的・対象業務・禁止事項・成果指標のない研修は「便利だった」で終わり、翌週には使われなくなる
  • 2025年のMcKinsey AI調査では「AI利用は広がっているが価値創出とスケールにはまだ課題が残る」と整理されており、Microsoft Work Trend Index 2025でも組織変革・業務再設計・人とAIの役割分担が主要論点とされている

著者見解

この記事が指摘する「ツールより順番」という主張は、私がXincereでAIエージェント導入のPoCを支援する中で繰り返し目にしてきた構造そのものだ。

クライアント企業の担当者から最初に来る問い合わせの多くは「ChatGPTとClaudeはどちらがよいか」「Copilotを全社導入するにはどうすればよいか」という形をしている。だが実際に話を掘り下げると、どの業務に当てるか、誰が承認するか、どの情報を入れてよいか、成果をどう測るか、がまったく決まっていないケースが大半だ。ツールを先に決めることで「動いている感」は生まれるが、業務フローに乗らないツールは3週間で使われなくなる。

記事の「いきなり研修をするな」という指摘も的確だ。研修は確かに社内の熱量を一時的に上げるが、業務棚卸しとルールと評価指標がない状態での研修は、イベントとして消費されて終わる。私の経験上、PoCを先に1〜2業務で回して「この業務ではこれだけ時間が減った」という実績を作ってから研修に入るほうが、現場の定着率が明確に違う。

記事で示された30日ロードマップの構造——「禁止範囲と責任の明確化 → 業務棚卸し → ルール → PoC → KPI報告」——はPoC設計の観点からも理にかなっている。特に「情報管理の不安を先に潰す」というステップを前半に置いている点は重要で、現場がAI活用を止める最大の心理的ブレーキが「入力した情報が外に出るのでは」という漠然とした懸念だからだ。この不安に答えないまま利用促進しても、現場は動かない。

AI推進は、記事が最後に言う通り「イベントではなく運用」である。30日ロードマップをそのまま使うかどうかより、「順番を設計する仕事だ」という認識を推進担当が持てるかどうかが、成否を分ける最初の分岐点だと思う。

出典: AI推進担当になったら最初の30日でやること|社内導入・ルール・KPI・現場定着の完全手順|KAWAI

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株式会社Cloverse様|アパレル向けAIクリエイティブ基盤「Clovia Enterprise」を4名体制で開発支援

**2026年2月の開発着手から約5.5ヶ月で、アパレル企業向けAIクリエイティブ基盤としてプレスリリース公開まで到達しました(2026年7月29日発表)。** Cloverse様の発表によれば、Clovia Enterprise は PUMA社・ルック社をはじめとする**30社以上のアパレルブランドとの検証**を経ており、現在は先行導入企業(Founding Partner)を限定募集する段階に入っています。 開発規模は次のとおりです(2026年7月29日時点、リポジトリ実測値)。 | 指標 | 実績 | |---|---| | 開発体制 | エンジニア4名 | | 開発期間 | 2026年2月13日〜(継続中) | | コミット数 | 約1,480 | | プルリクエスト | 373本 | | 対応イシュー | 428件 | | 実装計画ドキュメント | 162本 | | データモデル | 83テーブル | ### この事例からの示唆 **生成AIプロダクトの難所は、モデルではなく業務側にある。** 画像を1枚生成すること自体は、いまや誰でもできます。事業として成立させるために必要だったのは、マスター管理・制作進行・レビュー・権限・課金・非同期処理といった、業務を回すための地味な設計でした。83テーブルという規模は、その事実を素直に表しています。 **未知の業界のプロダクトは、業務を理解した側が設計しないと形にならない。** アパレルEC制作の工程を知らないまま「AIで画像生成する機能」を作っても、現場では使われません。ヒアリング・R&D・プロトタイプ・提案までを開発チームが担ったのは、そうしないと仕様が決まらない領域だったからです。この構造は[「使われないシステム」が生まれる要件定義の失敗](https://blog.xincere.jp/articles/why-unused-systems-are-born-requirements-definition)とちょうど裏返しの関係にあります。 **モデル選定に正解が無い領域では、検証を設計プロセスに組み込む。** どの生成モデルを使うかは半年で変わります。だからこそ、モデルを差し替えられる構造と、検証結果を機能設計に反映し続ける進め方の両方が必要でした。 ### よくある質問 **Q. 生成AIを使ったプロダクトの開発は、通常のシステム開発と何が違いますか。** A. 最も違うのは、着手時点で仕様が確定できない点です。どのモデルがどの品質を出せるかは検証しないと分からないため、R&Dとプロトタイプを設計工程に組み込む必要があります。一方で、組織・権限・課金・非同期処理といった土台は通常のSaaS開発と同じ設計が求められます。 **Q. 業界知識がない領域でも開発支援を依頼できますか。** A. できます。この事例ではアパレルEC制作の業務理解から入り、ヒアリングとプロトタイプを通じて要件そのものを一緒に作りました。仕様が固まっていない段階からのご相談のほうが、むしろ手戻りが少なくなります。 **Q. どのくらいの体制・期間の支援ですか。** A. エンジニア4名、2026年2月から継続中です。プレスリリース公開までは約5.5ヶ月でした。規模や費用感の考え方は[システム開発とは](https://blog.xincere.jp/articles/what-is-system-development)で解説しています。 ### 関連する支援領域 - [AIシステム開発とは?開発の流れ・費用相場・失敗しない進め方](https://blog.xincere.jp/articles/ai-system-development-guide) — 生成AIプロダクト開発の全体像 - [AI PoCの進め方5ステップ|「PoC止まり」を防ぎ本番導入につなげる実践手順](https://blog.xincere.jp/articles/ai-poc-how-to-proceed) — 検証を本番に接続する設計 - [FDE(Forward Deployed Engineer)が示す、上流から伴走できるエンジニアの価値](https://blog.xincere.jp/articles/fde-forward-deployed-engineer-upstream-value) — 本事例の進め方の背景 生成AIを使った新規プロダクトの立ち上げや、仕様が固まりきっていない段階からの開発支援については、[開発のご相談](https://blog.xincere.jp/contacts)からお問い合わせください。 **出典:** [アパレル企業向けAIクリエイティブ基盤「Clovia Enterprise」提供開始(株式会社Cloverse / PR TIMES, 2026-07-29)](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000139250.html)

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徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いはnoteの創業ストーリーに綴っている。

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