なぜ「見積業務」のAIエージェントから始めるのか——Dandori AI開発ストーリー

AI開発・生成AI活用公開日:2026年7月2日
徐 聖博
徐 聖博

株式会社シンシア 代表取締役社長

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  1. 結論:AIエージェントの価値は「賢さ」ではなく「業務に根づくか」
  2. 3.5兆円市場の熱気と、現場の温度差
  3. なぜ「見積業務」なのか
  4. 「考えるためのAI」と「業務を回すためのAI」
  5. ロードマップ:見積は入口にすぎない
  6. Early Accessという進め方
  7. まとめ:泥臭い業務から、AIは根づく
  8. FAQ:Dandori AIに関するよくある質問
  9. Dandori AI(ダンドリAI)とは何ですか?
  10. ChatGPTなどの汎用AIと何が違いますか?
  11. どのような企業に向いていますか?
  12. 参考文献

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私たちシンシアは、AI見積エージェント「Dandori AI」を開発しています。結論から言うと、私たちがAIエージェント事業の入口に選んだのは、派手なユースケースではなく、見積業務という最も泥臭いノンコア業務でした。この記事では、なぜ「考えるためのAI」ではなく「業務を回すためのAI」を、なぜ見積から作るのか——開発の背景にある判断を、代表兼エンジニアの立場から書きます。

この記事でわかること

  • 日本のAIエージェント市場の現在地と、現場の温度差
  • 汎用AI(ChatGPT等)と業務エージェントの設計思想の違い
  • なぜ最初のターゲットが「見積業務」なのか
  • Dandori AIのロードマップと、Early Accessという進め方

結論:AIエージェントの価値は「賢さ」ではなく「業務に根づくか」

汎用AIは既に十分賢いです。それでも企業の業務が自動で回り始めないのは、賢さが足りないからではなく、AIが業務の文脈を保持し続ける設計になっていないからだと私たちは考えています。

会社ごとの単価感、項目の命名ルール、過去案件の癖。こうした「その会社の当たり前」を毎回プロンプトで入力し直すのは現実的ではありません。業務に組み込むAIには、会話の賢さとは別の設計思想——データを蓄積し、使うほどその会社の仕様に最適化されていく構造——が必要です。Dandori AIはこの思想で設計しています。

3.5兆円市場の熱気と、現場の温度差

調査会社Grand View Researchによると、日本のAIエージェント市場は2030年までに約3兆5,690億円規模へ拡大する見通しで、2025年からの年平均成長率は46.3%とされています(ビジネス+IT、2025年9月報道)。

一方で、現場の肌感覚は市場予測ほど単純ではありません。生成AIの利用率は1年でほぼ倍増して過半数に達しましたが、「使っている」と「使いこなしている」の間には大きな溝があります。ツールを触る人が増えても、業務プロセスそのものがAIで回り始めた会社はまだ少数です。

この溝こそが、私たちがAIエージェント事業に参入した理由です。市場の熱気に乗るためではなく、利用と定着の間にある溝を埋める製品が必要とされていると判断しました。

なぜ「見積業務」なのか

シンシアの主要事業は受託のシステム開発です。小売・EC、製造・物流、SaaS事業者まで幅広い業界の業務システムを作ってきた中で、繰り返し目にしてきた共通のボトルネックがあります。それが見積でした。

  • 見積作成が属人化しており、担当者によって精度と品質がばらつく
  • 規模・仕様・条件が変わるたびに作り直しと差し替えが発生する
  • 仕入先・外注先への見積依頼・回収・確認が担当者ごとに分散し、抜け漏れが起きる
  • 提出件数が多く、本来注力すべき提案・調整の時間が削られる

見積は受注の入口であり、ほぼすべてのBtoB企業に存在する業務です。それでいて「考える仕事」と「作業」が混在しており、作業部分の比率が高い。AIに任せる部分(入力と整形)と人が判断する部分(確認と提出)を分けやすい——エージェント化の第一歩として、これ以上ない題材だと考えました。

「考えるためのAI」と「業務を回すためのAI」

Dandori AIの仕組み自体はシンプルです。商談メモ・議事録・要望メールを入力すると、AIが項目・単価・数量を抽出して見積案を組み立て、人が確認・調整して提出する。3ステップです。

汎用AIとの違いは、賢さではなく記憶の構造にあります。過去の見積書・価格表・商談記録を会社ごとの独自データベースに蓄積し、その会社の単価感・項目構成・命名ルールに沿った提案へと精度を高めていく。毎回前提を入力し直す必要がない、業務の流れに沿って継続的に使える——これが「業務を回すためのAI」の意味です。

企業導入では、既存の基幹システムとどうつなぐかも避けて通れません。API直接連携とCSVバッチ同期という2つのアーキテクチャの使い分けは、DandoriAIと基幹システムの連携方法で詳しく書いています。会計ソフト(freee・マネーフォワード クラウド・弥生)との連携も順次進めている領域です。

見積業務のAI化・Dandori AIのデモをご希望の方へ

Dandori AIは現在、先行利用(Early Access)企業様を募集しています。実際の見積業務でお使いいただき、フィードバックをもとに精度と使い勝手を磨いています。

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ロードマップ:見積は入口にすぎない

Dandori AIの構想は見積で完結しません。見積で蓄積したデータとフィードバックを土台に、隣接するノンコア業務へ段階的に広げていきます。

  1. Phase 1: 見積を起点に、発注・案件管理まで調達まわりをエージェント化
  2. Phase 2: 請求・プロジェクトマネジメント・タスク管理・経理・労務へ横断
  3. Phase 3: 顧客管理・人材採用・マーケティングへ拡張
  4. Phase 4: 法務・在庫管理などコーポレート領域の周辺業務まで

順番に意味があります。見積は案件の起点なので、ここで蓄積されるデータ(顧客・案件・価格・仕入先)は、発注にも請求にも顧客管理にもそのまま効いてくる。入口の業務を押さえるほど、後続の業務のエージェント化が容易になるという設計です。

Early Accessという進め方

Dandori AIは完成品を売る進め方をしていません。先行利用企業に実際の見積業務で使ってもらい、フィードバックを製品に反映するサイクルで磨いています。

これは、AIシステム導入全般に対する私たちの考え方でもあります。AIの精度は実データと現場の運用に触れて初めて上がるものなので、PoC・スモールスタートで小さく検証してから広げるのが結局いちばん速い。自社プロダクトでも同じ進め方を選びました。機能の足し算より「誰が触っても迷わないこと」を優先しているのも、業務に根づくことを最重視しているためです。

まとめ:泥臭い業務から、AIは根づく

AIエージェント市場は2030年に向けて大きく伸びる予測ですが、その果実は「賢いAIを作った会社」ではなく、業務の文脈を保持する設計で現場に根づいた製品に落ちると私たちは考えています。だからこそ、見積という最も泥臭く、最も普遍的な業務から始めました。

次に読むべき記事


FAQ:Dandori AIに関するよくある質問

Dandori AI(ダンドリAI)とは何ですか?

商談メモや議事録を入力すると、項目・単価・数量を含む見積案を自動で組み立てるAI見積エージェントです。仕入先・外注先とのやり取りの集約にも対応し、見積業務全体を一つのワークスペースで完結させることを目指しています。詳細は公式サービスページをご覧ください。

ChatGPTなどの汎用AIと何が違いますか?

汎用AIは単発の質問に答えるのは得意ですが、会社ごとのルールや過去案件を継続的に保持できず、毎回前提を入力し直す必要があります。Dandori AIは過去の見積書・価格表・運用ルールを独自データベースに蓄積し、使うほど自社仕様に最適化される設計です。

どのような企業に向いていますか?

見積作成が属人化している、毎回の調整に時間がかかる、仕入先とのやり取りが分散している、見積の提出件数が多い——こうした課題を持つBtoB企業に向いています。現在はEarly Access(先行利用)企業を募集しており、導入条件・料金は個別にご相談いただけます。


参考文献

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著者について

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徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いは[noteの創業ストーリー](https://note.com/shengboxu/n/n8b4e482c62ad)に綴っている。

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