シーメンスが過去最高益——AIブームで最も確実に儲けているのは「AIを作っていない会社」だという事実

AI開発・生成AI活用公開日:2026年8月7日最終更新日:2026年8月22日
徐 聖博
徐 聖博

株式会社シンシア 代表取締役社長

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  1. 要点 (出典の事実のみ)
  2. 誰がAIで儲けているのか、を正確に見る
  3. 開発会社の事業判断にどう効くか
  4. 誤読しやすい点
  5. 製造業の同じ課題をシステムで解く場合

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シーメンスが2026年度第3四半期に、過去最高の産業利益を記録した。牽引したのはデータセンター向けのインフラと産業ソフトウェアで、同社はAIブームの受益者として明確に位置づけられている。ここで見るべきなのは決算の中身そのものより、AIブームで最も確実に利益を出しているのがAIを作っていない会社だという構図のほうだ。開発を生業にしている会社が自社をどこに置くかという話に直結する。

要点 (出典の事実のみ)

  • 受注は前年同期比14%増の279億ユーロで過去最高。売上は8%増の208億ユーロ。Industrial Business の利益は25%増の35億ユーロで、こちらも過去最高。利益率は14.9%から17.3%へ改善した。
  • フリーキャッシュフローは42%増の41億ユーロ。純利益は15%増の26億ユーロ。
  • 部門別では Smart Infrastructure の受注が42%増の80億ユーロと四半期最高を記録し、利益率は20.0%。データセンター事業は9か月間で3桁の受注成長、規模は約60億ユーロ
  • Digital Industries は利益が44%増の9億2,300万ユーロ、利益率18.7%。デジタル事業全体は9か月で18%成長し、当初の15%という目標を上回っている。
  • 通期のEPS見通し (PPA調整前) を10.70〜11.10ユーロから 11.20〜11.50ユーロへ上方修正。CEO の Roland Busch は「また一つ、記録的な受注と利益の四半期を達成した」と述べている。

誰がAIで儲けているのか、を正確に見る

この決算で伸びているのは、モデルでもチャットボットでもない。データセンターが建つときに必要になる電力・配電・空調・制御と、工場やプラントを動かす産業ソフトウェアである。Smart Infrastructure の受注42%増と、Digital Industries の利益44%増。この2つが数字を作っている。

AIブームの資金の流れを追うと、モデルを作る側は巨額の資本支出を先に積み、回収は後回しになる。マイクロソフトですら評価されたのは投資額ではなく「増額を止めた状態で成果が伸びたこと」だったし、ByteDance のAI売上40億ドルは投資額の6分の1にとどまっている。一方でシーメンスは、そのブームが生む物理的な需要を受注として即座に計上し、利益率まで改善させている。同じAIブームの中で、立ち位置によってこれほど損益の出方が違う。

私はこれを「シーメンスが賢い」という話としては読んでいない。AIという技術の周りには、モデルを作る層とは別に、それが動くために必ず必要になる層があり、そこは競争条件がまったく違うという事実の確認として読んでいる。

開発会社の事業判断にどう効くか

三つある。

一つ目。自社を「AIを作る会社」と位置づけない。 モデルを持つ勝負は資本の勝負で、中堅規模の開発会社が挑む場所ではない。だがAIが業務で動くためには、データが整い、既存システムと繋がり、権限が設計され、運用が回る必要がある。この層の需要は、モデル層の投資が増えるほど増える。シーメンスがデータセンター建設ブームの受注を取っているのと、構造としては同じ位置に立てる。

二つ目。利益率が出るのは「ソフトウェア + 継続」の形。 Digital Industries の利益率18.7%、デジタル事業18%成長という数字は、一度作って納めて終わりではなく、使われ続ける前提のソフトウェアから出ている。受託開発は本質的に一度きりの取引になりやすいが、AI導入案件は運用・改善・データ整備が継続的に発生する。そこを最初から契約と体制に織り込めるかどうかで、事業としての質が変わる。私たちが検討すべきなのは単価を上げることより、継続する形に持っていくことだ。

三つ目。「AIが動くための業務側の配管」を売り物として言語化する。 顧客に「AIを導入しませんか」と言うと、モデルの話に引きずられて比較検討が始まる。「AIを入れても効かない状態を先に潰しませんか」と言えば、それは業務基盤の整備であり、私たちが確実に価値を出せる領域になる。需要の源泉は同じAIブームなのに、勝負する場所が違う。

誤読しやすい点

「製造業の巨人の決算だから自社には関係ない」という読み方はもったいない。規模も業種も違うが、AIブームの利益がどの層に落ちているかという情報はそのまま使える。実際、製造業のAI活用の現場でも、価値を生んでいるのはモデルの性能ではなく熟練者の暗黙知をデータにする工程データ整備の順序だった。

逆に注意すべきなのは、データセンター需要には建設サイクルがあるということだ。3桁成長がこの先も続く前提で自社の計画を立てるのは危うい。受注は今の投資意欲を映しているだけで、需要の耐久性を保証しない。 そこは投資の話であって、私の断定できる領分ではない。確かなのは、AIが業務に入り込む過程で「繋ぐ・整える・運用する」仕事が増えるという方向性のほうだ。製造業のデジタルツイン活用でも見るべきは順番だった

出典: Record third quarter – Outlook raised (Siemens 公式プレスリリース、2026年8月6日) / Siemens rides AI boom to post its highest-ever industrial profit (Reuters、2026年8月6日)

※数値は Siemens 公式の四半期リリースで確認した値を採用している。

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受注・見積の自動化は、標準フローより例外処理の設計で成否が分かれます。製造業の受発注・見積業務をシステム化する設計で、対応できる範囲・データ・連携方式・費用を左右する条件を整理しています。

製造業でAIを業務に載せる場合は、モデル選定より先に評価指標と人の確認方法を決めます。製造業のAI導入と適用可否の判断基準も併せて参照してください。

製造業向けに対応している業務の一覧は製造業向けシステム開発・AI実装支援、提供範囲と進め方は製造業向けシステム開発サービスにまとめています。

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AIをどこまで内製するか、どの業務から着手するか、体制をどう組むか。開発会社・SIer・事業会社の開発部門の方からのご相談を無料で承っています。同じ問題を自社でも解いている立場としてお話しします。

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株式会社Cloverse様|アパレル向けAIクリエイティブ基盤「Clovia Enterprise」を4名体制で開発支援

**2026年2月の開発着手から約5.5ヶ月で、アパレル企業向けAIクリエイティブ基盤としてプレスリリース公開まで到達しました(2026年7月29日発表)。** Cloverse様の発表によれば、Clovia Enterprise は PUMA社・ルック社をはじめとする**30社以上のアパレルブランドとの検証**を経ており、現在は先行導入企業(Founding Partner)を限定募集する段階に入っています。 開発規模は次のとおりです(2026年7月29日時点、リポジトリ実測値)。 | 指標 | 実績 | |---|---| | 開発体制 | エンジニア4名 | | 開発期間 | 2026年2月13日〜(継続中) | | コミット数 | 約1,480 | | プルリクエスト | 373本 | | 対応イシュー | 428件 | | 実装計画ドキュメント | 162本 | | データモデル | 83テーブル | ### この事例からの示唆 **生成AIプロダクトの難所は、モデルではなく業務側にある。** 画像を1枚生成すること自体は、いまや誰でもできます。事業として成立させるために必要だったのは、マスター管理・制作進行・レビュー・権限・課金・非同期処理といった、業務を回すための地味な設計でした。83テーブルという規模は、その事実を素直に表しています。 **未知の業界のプロダクトは、業務を理解した側が設計しないと形にならない。** アパレルEC制作の工程を知らないまま「AIで画像生成する機能」を作っても、現場では使われません。ヒアリング・R&D・プロトタイプ・提案までを開発チームが担ったのは、そうしないと仕様が決まらない領域だったからです。この構造は[「使われないシステム」が生まれる要件定義の失敗](https://blog.xincere.jp/articles/why-unused-systems-are-born-requirements-definition)とちょうど裏返しの関係にあります。 **モデル選定に正解が無い領域では、検証を設計プロセスに組み込む。** どの生成モデルを使うかは半年で変わります。だからこそ、モデルを差し替えられる構造と、検証結果を機能設計に反映し続ける進め方の両方が必要でした。 ### よくある質問 **Q. 生成AIを使ったプロダクトの開発は、通常のシステム開発と何が違いますか。** A. 最も違うのは、着手時点で仕様が確定できない点です。どのモデルがどの品質を出せるかは検証しないと分からないため、R&Dとプロトタイプを設計工程に組み込む必要があります。一方で、組織・権限・課金・非同期処理といった土台は通常のSaaS開発と同じ設計が求められます。 **Q. 業界知識がない領域でも開発支援を依頼できますか。** A. できます。この事例ではアパレルEC制作の業務理解から入り、ヒアリングとプロトタイプを通じて要件そのものを一緒に作りました。仕様が固まっていない段階からのご相談のほうが、むしろ手戻りが少なくなります。 **Q. どのくらいの体制・期間の支援ですか。** A. エンジニア4名、2026年2月から継続中です。プレスリリース公開までは約5.5ヶ月でした。規模や費用感の考え方は[システム開発とは](https://blog.xincere.jp/articles/what-is-system-development)で解説しています。 ### 関連する支援領域 - [AIシステム開発とは?開発の流れ・費用相場・失敗しない進め方](https://blog.xincere.jp/articles/ai-system-development-guide) — 生成AIプロダクト開発の全体像 - [AI PoCの進め方5ステップ|「PoC止まり」を防ぎ本番導入につなげる実践手順](https://blog.xincere.jp/articles/ai-poc-how-to-proceed) — 検証を本番に接続する設計 - [FDE(Forward Deployed Engineer)が示す、上流から伴走できるエンジニアの価値](https://blog.xincere.jp/articles/fde-forward-deployed-engineer-upstream-value) — 本事例の進め方の背景 生成AIを使った新規プロダクトの立ち上げや、仕様が固まりきっていない段階からの開発支援については、[開発のご相談](https://blog.xincere.jp/contacts)からお問い合わせください。 **出典:** [アパレル企業向けAIクリエイティブ基盤「Clovia Enterprise」提供開始(株式会社Cloverse / PR TIMES, 2026-07-29)](https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000139250.html)

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徐 聖博
株式会社シンシア 代表取締役社長

株式会社シンシア(Xincere, Inc.)代表取締役。中国生まれ・3歳から日本で育ち、日本語・中国語・英語を操るトリリンガル。大学院でコンピュータサイエンス(進化型ニューラルネットワーク)を研究し、GREE・メドレー・カウンティア・Indeed Japan などで検索エンジン開発やスタートアップの立ち上げ・グロースを経験。2020年に「人の価値をテクノロジーで最大化する」という想いでシンシアを創業した。エンジニア歴15年以上、代表でありながらほぼ毎日コードを書く現役エンジニアとして、基幹システム開発からAIエージェント活用まで顧客の事業成長に並走している。創業に込めた思いはnoteの創業ストーリーに綴っている。

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